SNSなど洪水のように流れてくる情報から「本当に役に立つ情報」を選び取るのは難しいもの。
そこでなるべくフェアな視点からメリット・デメリットの両方をご紹介することで皆様の判断のお役に立つよう情報提供をしたいと考えています。
今回のテーマは「鉄骨住宅 VS 木造住宅」です
みなさん何となく「鉄骨住宅は高いけど品質が高い」「木造住宅は安いなりに品質が低い」というイメージをお持ちではないでしょうか。この業界に入る前の私も、実際そんなイメージを抱いていました。
しかし日本の戸建住宅においては「約92.5%が木造住宅」「鉄骨住宅は約3.5%」というシェアが表す通り、段違いの建築数を我が国では誇ります。
出展:住宅・土地統計調査 平成30年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計
それではどういった背景から、木造住宅がシェアを獲得しているのかメリットデメリットを考えていきましょう
〇鉄骨住宅のメリット:一般的な木造住宅よりも頑丈である。大空間が取れる。
×鉄骨住宅のデメリット:気密・断熱性能がかなり低い、(特に耐火被覆をされていない場合)火災に弱い、建設にも撤去にも費用がかかる
まずだれしも「鉄骨住宅の方が木造住宅よりも頑丈だろう」という直感的なイメージがあるでしょう。過去には某H社の建てた重量鉄骨造住宅が「鬼怒川の決壊に遭っても流されずに現状を維持した」というニュースもあって、ひときわ災害に強いイメージがあります。
どれだけお金をかけて豪華な住宅を建てたとしても、災害によって倒壊してしまっては何もなりませんから「安全はとにかく最優先だ」とお考えになるのは当然のこと。
しかしこれは「鉄骨住宅が強い」というよりは「構造計算をしていない木造住宅が弱い」と言った方が正しいでしょう。各地で発生している大規模地震による建物倒壊の大半は、構造計算をしていない木造住宅であると言って過言ではありません。
*「え?構造計算をしていない住宅なんてあるの??」という疑問をお持ちの方は ”4号特例 闇” で検索されるとなかなかの情報を得ることができます
反対に言うときちんと構造計算をしていれば木造、鉄骨という材質が頑丈さを担保するわけではないということも理解していただけるのではないでしょうか。
メリットのもう一つは「大空間を設けられる」ということ。某S社では「家族の幸せな大空間リビング」という提案をしていますが、例えば4m×4m以上の大空間が要望だとすると鉄骨住宅に分があります。
とはいえ、(弊社では取り扱っていないものの)木造住宅ながら同様の大空間を設けられるSE工法などが徐々に広がってきていることもあり、その優位性も縮まってきていると言えます。
さて一方で鉄骨住宅最大とも言えるデメリットは「気密・断熱性能が取れないこと」に異論はないと思います。いくら高性能な断熱材を用いていても、鉄骨住宅は構造上どうしても気密性能が取れないためせっかく高性能な断熱材を入れてもあまり実感がわきません。
*私個人も某H社の賃貸住宅に住んでいたことがありましたが、真冬は夫婦ともダウンベストを着ていないと寒くて寝られないという日々でした。。
さらに意外なことに「鉄骨住宅は火災に弱い」ということも見過ごせません。木造住宅と異なり延焼はしないものの、火災による加熱曲線によっても木造住宅は表面が炭化することで強度低下が緩やかですが、鉄骨は延焼から10分程度で約80%もの強度を失い、二階の荷重を支えきれなくなって崩落します。
そのため鉄骨住宅建築時にポイントになるのは「耐火被覆がされているかどうか」です。もし検討されている人がいたら、【必ず】聞いてみてください。「この見積書に耐火被覆の費用が含まれていますか?」と聞いていただくだけですから。
最後に最も大きなデメリットは「建設にも撤去にも費用がかかる」ではないかと考えます。
単純に構造材の単価が高い、運搬費用が高い、(重量があるため)地盤改良費が高いという三重の理由によって木造住宅より建築コストが増大します。
そのうえ将来的にもし建物を解体処分する際も、およそ木造住宅の2~5倍は費用が掛かるでしょう。
せっかく子供のためにいい家を残してあげたいという動機で家を建てたのに、「父ちゃん・・なんでこんなに処分費用のかかる家を建てたんだよ・・」となってしまっては何のために家を建てたのかわからなくなってしまいます。
まとめると
・災害対策を強化するなら「構造計算をした木造住宅」という選択肢を考えてみる
・大空間を設けたい、費用も豊富にあるなら「SE工法」という選択肢を考えてみる
・鉄骨住宅専門だったハウスメーカーが続々と木造に参入している事実を考えてみる
です。
今回もお読みいただいてありがとうございました!