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なにやら禅問答のような本でした。

「向くべきゴールは持続可能な利益です」

「競争戦略」というと小難しそうに聞こえるのですが、あっさりといってしまえば、「どうやって儲けるのか」という話です。

などと非常に普遍的な内容の一冊かと思いきや、

逆説的な話ですが、業界の競争構造という考え方は、競争ではなく、むしろ「無競争」に注目しています。

などと競争原理を鼻から否定してくる。その理由を覗いてみれば

競争があるという前提で競争に勝つ、というよりも、正面から競争をしなくても済むような位置取りを見つけようという考え方です。平たくいえば「うまいこと儲かるところに身を置こう」という発想です。

という。昔読んだ経営コンサルタントの船井幸雄氏にも同じ主張があったなあ。

そしてこの辺りで本書は主張の核心に近づき

なぜ「一見して非合理」が重要になるのでしょうか。その理由は競争優位の持続性に深くかかわっています。違いをつくっても、それがすぐに他社に模倣されてしまうようなものであれば、一時的に競争優位を獲得できても、すぐに違いがなくなり、元の完全競争に戻ってしまいます。そうなると利益は期待できませんから、簡単にはまねできないような違いをつくるということが戦略の重要な挑戦課題です。これが競争優位の持続性という問題です。

クリティカル・コアが非合理に見えるのは、競争相手のミスや勘違いではなくて、それが非合理であるという合理的な理由(ちょっとややこしい表現ですが)があるからです。部分的な非合理を他の要素とつなげたり、組み合わせることによって、ストーリー全体で強力な全体合理性を獲得する。これがストーリーの戦略論の面白いところです。

模倣しようとすること自体が差異を増幅するという論理は、結果として起こるB社の「敵失」や「自殺点」がA社に持続的な競争優位をもたらしているという考え方です。B社はA社に追いつこうとして、主観的には合理的な模倣行動をとるのですが、実際はその過程で自らのパフォーマンスを低下させてしまうという落とし穴に陥ります。

という、まさに無競争を実現するための知恵に溢れています。

昨今は生成AIの出現によって私たち営業パーソンの存在意義すらも危ぶまれていますが、本書にはそのあたりのヒントも読み取れるようでした。

ぜひご一読を。